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小池いわく、すべては「縁とタイミング」 そこに垣間見えるバンドというものへのロマン

■そうして、脱退後も予定してたライブを飛ばすことなく活動を続けていこうとなりました。そうなった時に、ドラマーとしてyuccoさんに声をかけた理由は何だったんですか。
小池「理由がですねぇ、平たく言うと、特にこれといった理由はないんですよ(笑)」

■ないの!?(笑)。
小池「もうほんと、縁とタイミング、ですね」
yucco「そうですね(笑)」

■そもそも知り合いではあったんでしたっけ?
yucco「(2019年の)列伝ツアー(「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2019」)でご一緒していて。ただ、そのツアー中に小池さんと話すという機会もほとんどなかったんですけど(笑)」
小池「そう(笑)。ただ、yuccoはyuccoでおそらく思うところがあってバンドから抜けたタイミングで(2021年6月に2を卒業)、時期を近くして俺らもメンバーが抜けることになって。そういう縁とタイミングって、俺は何か惹かれてしまうところがあるんですよ。それで知人を介して連絡を取ったんですけど」

■yuccoさんはオファーを受けた際、どんなふうに思ったんですか。
yucco「初めに連絡をもらった時はただただびっくりしましたね。小池さんがたくさんいるドラマーの中から私を選んでくれたっていう、その驚きと嬉しさがあって………それで一晩考えて、選んでくれたことに対して応えたいっていう気持ちになったので、お受けしました。元々当時は(2を卒業した後)、実家に帰って、もう音楽から離れようかなぁと思ってたんですよ。でも、その連絡をもらった時はまだ、完全に音楽をやめようと心を決めてしまう前で。そこで今一度考えて、やっぱりもう一度ドラムの前に座ってみようかという気持ちになれましたね」

■ご自分にとっては、そこでもう一度ドラムの前に座ってみようと思えたことは大きな出来事だったんですか。
yucco「大きなことでしたね。そう思えたこと自体も大きかったし、実際にまたドラムの前に座った時に、『ああ、ここが私の居場所なんだな』って再確認できた。それはやっぱり、私の人生にとって大きなことでしたね」

■ちなみに、そもそもyuccoさん自身はtetoというバンドに対してどんなイメージを持っていたんですか。
yucco「列伝ツアーで9箇所一緒にやって、間近でライブを観させてもらった時もとにかくカッコいいバンドだなと思っていたし、素直に言うと、小池さんに惹きつけられる、目を奪われるなぁって思ってました。だから誘われた時も、自分が叩いているところを想像するじゃないですか。そうした時に、小池さんの後ろで叩くことで光らせてもらえるんじゃないかなってドキドキするものがあって…………」
小池「………もっと言っていいんだよ(笑)」
yucco「あははははははは!」

■いろんなヴォーカリスト、いろんなバンドマンがいるじゃないですか。その中で小池くんのどんなところに惹きつけられるんだと思います?
yucco「なんだろう………アブナイところ?」
小池「(笑)」
yucco「カッコいいっていう意味合いでのアブナイもあるし、大丈夫か!?っていう意味合いでのアブナイもあるし。だからちょっと羨ましいなっていう気持ちもありました。このヴォーカルの後ろで叩いたら一体どんな気持ちになるんだろう?と思いながら観てたところはありました」

■ステージ上での小池くんのアブナイ感じっていうのは私も感じる時があって。私が思う小池くんのアブなさというのは、この人はステージ上だったら生と死の境界みたいなものも飛び越えていっちゃいそうだなと思ってしまうくらいの、音楽/表現というものに対する切迫した没入感と言いますか。それがスリリングなカッコよさを生んでいるところもあるし、同時に、tetoのライブを観ていて生きるということ、表現するということって美しいなと思わせられるところでもあるんですよね。そういう意味でのアブなさみたいなものを感じるんですが、yuccoさんの言うアブなさってそれに近いもの? それともまったく別の感覚ですか?
yucco「あ、でも今おっしゃったことはすごくわかりますし、私もそこが魅力だなと思います」

■そうやって縁とタイミングが重なって、ライブを一緒にやることになりました。とはいえ、どんなに縁とタイミングが重なろうが、ミュージシャンとして合う/合わないっていうのは現実問題として出てくると思うんですよ。でも結果、こうして正式に一緒にバンドをやろうと思うくらいにハモれたのは、何が大きかったんだと思います?
小池「ミュージシャンとしてダメだなって思うくらいの縁とタイミングだったら要らないかもしれないですね(笑)。これはyuccoにとってはあんまり嬉しい言葉ではないかもしれないけど、その人がどんな音楽を聴いてきたのか? その人にどれだけの技量があるのか?ということを考慮してバンドを続けるくらいなら、俺はそんなバンドはやりたくないです。それは最初にtetoを組んだ時からそうなんですよ。結局俺は、ロマンみたいな原動力を欠かさずにバンドをやっていたい。俺がバンドをやる理由はそこなんですよね」

■今の発言、めちゃくちゃ素敵だなと思います。
小池「これは健一郎に対してもそうなんですけど、今までもこれからも、歩幅を並べて歩くバンドではないんでしょうね。どっちが前にいるかとかではないんですけど、敢えて足並みを揃える必要はない、行けるヤツは先に行けばいいし、それを追いかけるヤツがいてもいい、だけど結果的には歩幅が合って並べたらいいなっていう気持ちはもちろんあるし、そういうつもりでやっているというか。ただ、最初から話し合って歩幅合わせようぜって決めることはしない」

■私は今の話は、すごくバンドっていうものを表しているなと思いますけどね。技量を考慮して一緒にやるかどうかを決めるようなバンドはやりたくないという話が先ほどありましたけど、きっと小池くんにとって、今この時、バンドをやり続けていこうと思った時に隣にいたのが佐藤くんとyuccoさんであったということが重要で、それ以上でも以下でもない。だけど、それこそがバンドというもののロマンなんだっていう、そういう話なんじゃないかなと思ったんですが
小池「そうですね。バンドはミラクルの連続なんで。ミラクルのないバンドなんて俺は興味がないっていうのは、やっぱりどうしたってありますね」

■よくわかりました。ちなみにyuccoさん自身は、実際に一緒に音を鳴らしてみてどんなことを感じたんですか。
yucco「初めてのライブとかは正直いっぱいいっぱいで、あんまり考える暇もなかったんですけど。でも今思うのは、バンドを支えたいとかじゃなくて、ただ私の一番のパフォーマンスができたら、それがバンドにとっても一番いいんじゃないかっていう、それだけですね」
小池「もちろん縁とタイミングで叩いてもらえてよかったと思うところには、本人の実力もあるんですけどね。まあ今だから言うけど、最初にリハ入った時は俺、『あ、これはヤバいかもな』と思ったけどね。『ヤバい、yuccoめちゃめちゃドラム下手になってるかも』って(笑)」
yucco「あはははははははは!」
佐藤「まあ、ドラム自体をしばらく叩いてなかったわけだしね(笑)」
小池「で、そのヤバいなっていうまま終わる人だったら縁がなかったのかもしれないけど、結局はそこを克服してきて、2度目のスタジオではバッチリだったから。というところで、『ああ、これは縁とタイミングが合う人だな』と思えましたね」

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