the dadadadys
小池 貞利  (Vo/Gt)   |   佐藤 健一郎  (Ba)   |   yucco  (Dr)

インタビュアー:有泉智子(MUSICA)

■the dadadadysという新しい名前で新しいスタートを切りました。まずはこうして新体制で2曲の新曲を完成させた今、どんなお気持ちなのかを佐藤くんから伺えますか。
佐藤「本当に早速新曲ができまして。今は『ああ、また始まったな』という感覚が大きいですし、なんか凄く新鮮ですね。ある種、最初にバンドを始めた頃に近い気持ちもありますし……たぶん、あの時よりもいい気持ちだと思うんですけど」

■当時よりもいい気持ちというのは、どんな意味合いで?
佐藤「年齢とかもあると思うんですけど(笑)、これまで6年やってきた経験も踏まえて前向きな、清々しい気持ちが大きいですね」

■言ってみれば、右も左もわからないままtetoを始めた当時よりも、この6年に積んできた自分の経験値も踏まえて今のバンドにワクワクできているという、そういう感覚ですか?
佐藤「あ、まさにそうですね」

■yuccoさんは昨年の夏以降、サポートドラマーとしてライブを共にされてきましたけど、いざ正式なメンバーとなり、新曲をレコーディングされた今、どんなふうに感じてますか。
yucco「今回の新曲自体にも初期衝動感があるなと思ってて。今まではサポートとして叩かせてもらっていたので、コピーをしているような感覚でもあったんですけど、こうやって自分のドラムが形になったことで嬉しい気持ちがありますし、今までやってこなかった自分のプレイができたなと思います。自分の中にあるドラムの幅を、小池さんと佐藤さんに膨らませてもらったというか。ドラマーとしての自分の器を少し広げることができた楽曲群になったなと思ってます」

■小池くんは実際今、どんな心境なんですか。
小池「さっき健一郎が『バンドを始めた頃に近い』と言ってましたけど、俺はそれとは少し違っていて。まあやっぱり、何も知らないまっさらな状態でtetoを始めた頃とはどうしたって違うじゃないですか。あの頃と比べたら年齢も重ねたし、見てきたものもいろいろあるし………だし、別に当時に戻りたい、戻ろうっていう気持ちもないので」

■はい。
小池「名目上は心機一転、新しいスタートという感じに見えると思うんですけど、実は仕切り直すっていうつもりもないんですよね。あくまで延長線上でやるつもりだし、とはいえ同時に、積み上げてきたものに囚われたくもない。そこを自分達で上手い具合に保ちつつやっていけたらなというのはあるんですよね」

■順を追ってお話を伺いたいんですが、昨年の夏、tetoとして3作目のフルアルバム『愛と例話』をリリースする直前にメンバーが脱退しました。その時点では、小池くんと佐藤くんはそれをどう受け止め、そして自分達の未来をどう考えながら活動を続けていったんですか。
小池「(脱退に関しては)まあ仕方ないことだったなというのが大きくて。本当はあの場でもう終わりでいいかなとも思ったんですよ」

■それはtetoというバンドを終わらせてもいいかな、と。
小池「はい。ただリリースも決まってるし、ライブも年末まで決まっているという中で、個人的には『じゃあもう、それ全部やらねえ!』という気持ちにはならなかったので。なのでせめて年内は……という感じで続けてましたね。だから変な話ですけど、メンバーが脱退してからやっていたライブというのは、もうtetoではないんですよ。やっぱりtetoはまっさらな状態からあの4人で始めたものだし、乗りかかった船として何とかずっと漕いでいきたいなと思いながら活動してきましたけど、その人の事情があって脱退するということになってしまって……それは仕方ないことだと思うんですよ。だからそうなった以上、tetoとしての表現はあの時点までかなとは思ってましたね」

■言い方を換えると、メンバーが脱退した以上はもうtetoではない、だけど、『愛と例話』という素晴らしいアルバムはすでに完成していたわけで、それがある以上はあの作品のリリースとツアーまではやり切ろう、みたいな、そういう心情だったということ?
小池「うーん…………ほんとに正直に言っちゃうと、俺が歌えばtetoになる、みたいなところもあるんですよ。自分はヴォーカルだし曲も作っている人間として、ちょっと傲慢というか、強引なところもあると思いますから(笑)。だから俺が歌えばtetoだよなっていう気持ちも半分ありつつ、とはいえあの4人で培ってきたものというのは確実にあるので、それが失われたらもはやtetoではないよなという気持ちもあって」

■その感じはとてもわかります。
小池「だから揺れてはいましたね。結果として脱退後も年末までいいライブができたなと思うんですけど、俺の中ではなんかスッキリしないというか、tetoっていう名前でやり続けていることに対する気持ち悪さみたいなものは感じてましたね」

■それが今回の改名に繋がっていく?
小池「そうですね」

■たとえば、現実にyuccoさんをサポートに迎えてライブをやっていく中で、この体制であればバンドとして今後への光が見える、というような確信を持てた部分もあったんですか。
小池「あ、そこまでは考えてなかったかもしれない(笑)。もうちょっと雑な理由と言いますか………やっぱ、tetoとして成し遂げたいこともあったんですよ、一丁前に。それをまだ成し遂げられていない、中途半端な状態だなっていうのはあって。そういう状態で解散するっていうのはカッコよくないなとも思ったし。だから解散ではなく改名なんですよ。まあ世間の人から見たら解散でも改名でもどっちでもいいんでしょうけど、自分の中では哲学があって、改名という形にしたんですよね」

■すごくよくわかりました。佐藤くんはどんなふうに感じてたんですか。
佐藤「今の話も含め、改名に至る経緯に関してはすごく納得していて。そもそも脱退の話が出た時も、『来る時が来たな』という感じがあったんですよね。それは抜けた人達にとっても必要なことだったでしょうし、私達にとっても、これからもっと進むために必要なことだったというか……だから私は脱退後のライブに関しても一貫して前向きで」
小池「そう、だからあの脱退が『え、意外だな』という感じだったら、こうはなってなかったような気がする。来る時が来たじゃないですけど、ある意味では想定内の出来事でもあったので、だからこそその後のライブもやるか!って感じになれたというか、自分達は自分達としてやるべきことをやるっていうことができたんだと思いますね」

■これ、先に失礼な物言いになることをお詫びした上で敢えて聞きたいんですけど、先ほど小池くんはご自分で「自分は傲慢というか、強引なところもある」とおっしゃったじゃないですか。佐藤くんは、そんなヴォーカリストでありコンポーザーである小池くんと一緒にバンドをやり続けることに関して、一片の迷いもなくここまで来ている感じなんですか?
小池「(笑)」
佐藤「そうですねぇ………表現が難しいんですけど(笑)」

■ごめんなさい、本人前にして聞くなって話ですよね(笑)。
佐藤「いや(笑)。傲慢なところもあるって小池さんは言ってましたけど、それは私にとってはすごい魅力のひとつなんですよね」

■はい。
佐藤「それはヴォーカリストとしてもそうですし、コンポーザーとしてもそうですし。そういう小池さんの魅力に惹かれてバンドを始めたわけですけど、続けてくる中で、私の中ではその魅力というものはどんどん強くなっていて。だから一緒に進んでいくことに対してはまったく疑問を持ったことがないと言いますか、私にとってはいたって当たり前の、疑問を挟む余地もないことと言いますか(笑)」
小池「たぶん俺の強引なところって、後天的に身についたものな気がするんですよ。そうじゃなきゃやってこれなかったというか。元々傲慢な人間だったらもっとラクだっただろうなと思うこともあるんですけど(笑)」
佐藤「そうですね。だから強引さの中にも、繊細さはすごくある人だなと思っていて。それも魅力なんですよ」
小池「というか、そこがなかったら終わりだよな(笑)」

■(笑)。
佐藤「まあだから、当たり前のこと過ぎてわざわざ考えたこともなかったんですけど、小池さんに対して感じている魅力というものが、私がバンドを続けるひとつの理由になっていることは絶対に間違いないと思います」

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