10.吾亦紅

景気がいいとはいえなそうな現代、見たくないものを見せられているうちに
だんだんと信条に反する生き方をしなくてはならないといけないのではと心配になります。
本来は他人を気にする暇なんかないのに、他人の目を気にせざるを得ない感覚があったり。
本当らしく嘘をついたり、嘘らしく本当を話したり。
実際以上に偉く見せる必要があるように感じたり、嘘を匿う嘘が増えたり。
テレビやインターネット、SNSを楽しんでいると、頼んでもないのにそういう様子が目に映る。緊張してしまいます。

そんなことは関係なしに、人生はゆっくりと、確実に流れていきます。
年はとるし、家族が増えることがあれば皴も増えたり。脳の容量は圧迫されて物覚えも悪くなってくる。酒に強くなったり、弱くなったりする。友達も増えたり減ったりする。
身を取り巻く環境が変わることで物事の相貌はがらっと変わっていきます。
自分の世界の中心は自分であることも忘れちゃいそうになって、けっこうさびしい気持ちになります。

ただ、いい作品の前においては、石油が高いとか、景気が悪いとか、そういうことは何も関係がありません。
芯のある曲は、自分が一番赤いと言い切る凛とした強さ、吾亦紅の花のようにエネルギーがあります。
変わっていく時代の中で変わらないものを抱え続けることは大変ですが、こぼれそうになったら、この曲が何度でも思い出させてくれるように思います。
弾き語りでも完結する曲をバンドサウンドで展開していく。浪漫のひとつです。

このアルバムに入っているひとつひとつの曲には土地柄のようなものがあって、それぞれの気風をまといつつ存在しています。
アルバムを締める曲としてささやかに堂々と、心地よく普遍的に咲いています。